第0008話
セニアカー
2012年、はじめて口和町を訪れた時の話です。

当時私は広島市内に住んでいました。当時は車を持っていなかったので、唯一の足であるスーパーカブに乗って口和町まで行きました。片道3時間半の道のり。目的地の「ふくふく牧場」の近くまでは来たのですが、当時はスマホも無く、ふくふく牧場の看板もまだ大通り沿いに無かったので、道に迷ってしまいました。直前に交番で大体の位置を聞いてはいたのですが、はじめて来た田舎の道は民家と田んぼと林ばかり。お店もなければ目印になるような標識もありません。通行人もいませんでした。
そんな時にセニアカーに乗ったおばあちゃんが目の前からやって来ました。これを逃したら打つ手なし、と恥を忍んでふくふく牧場への道を尋ねたら、おばあちゃんは一言「ついてきんさい!」

セニアカーは、田舎ではよく見かける高齢者向けのモビリティ。かなりゆっくりと走ります。
ゆっくりと走るセニアカーについていくスーパーカブ、というなんとも間抜けな絵でしたが、幸い他に人もなし。無事にふくふく牧場に着くことができました。

牧場主の話で、案内してくれたおばあちゃんはふくふく牧場の放牧地の大家さんだとわかりました。それから2年間ほど牧場の再建の手伝いに通い、それがきっかけとなり、口和町に移住することになりました。おばあちゃんには移住してからも色々とお世話になりました。そのおばあちゃんも数年前に施設に入ってしまい、思い出のあの道を通るたびに少しさみしく思います。
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